犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)
について
膝蓋骨脱臼は「お皿の骨」がずれる整形外科疾患です。
小型犬の多くが抱えるこの問題の仕組み・症状・グレード・治療法をわかりやすく解説します。
小型犬
に特に多い整形外科疾患
4段階
重症度グレード分類
早期
発見で予後が改善
スクロールして読む
基本的な仕組み
膝の中で何が起きているのか?
膝蓋骨(しつがいこつ)とは膝の前面にある「お皿の骨」のこと。
通常は大腿骨の溝(滑車溝)の中に収まって上下にスムーズに動くはずが、脱臼するとこの溝から正常の位置から「はずれて」しまいます。
✓ 正常な膝
お皿の骨が大腿骨の溝にしっかりはまり込み、腱と筋肉がバランスよく機能している状態。
✗ 脱臼した膝(内方脱臼)
溝が浅かったり骨の向きが歪んでいると、お皿が内側に逸脱してしまう。これが脱臼の本質。
根本原因は骨の形の問題
多くのケースは先天性の骨格異常が原因です。成長期に伴って、「大腿骨の溝が浅い」・「脛骨が内側に回旋している」・「筋肉の牽引力のバランスが崩れている」など複合的要因が重なって膝蓋骨が外れやすい状態を作ります。
外傷でも起こりますが、小型犬では骨格的な素因が圧倒的に多くなります。
多くのケースは先天性の骨格異常が原因です。成長期に伴って、「大腿骨の溝が浅い」・「脛骨が内側に回旋している」・「筋肉の牽引力のバランスが崩れている」など複合的要因が重なって膝蓋骨が外れやすい状態を作ります。
外傷でも起こりますが、小型犬では骨格的な素因が圧倒的に多くなります。
好発犬種
なりやすい犬種
小型犬・超小型犬に多く、体重が軽くても関節への負担比率が大きいことが一因とされています。
チワワ
超小型犬
特に高リスク
トイプードル
小型犬
特に高リスク
ポメラニアン
小型犬
特に高リスク
ヨークシャーテリア
小型犬
特に高リスク
症状チェック
どんな症状が現れるのか?
初期は「たまに足を上げる」だけの軽微なものが多いですが、放置すると変形性関節症など二次的なダメージが蓄積します。
初期サイン
スキップ歩行・一時的な跛行
歩いている途中で突然片足を上げ、数歩スキップするように歩く。その後は何事もなかったように歩き続けることが多い。脱臼が一時的に起きてすぐ自然整復される軽度サインです。
中期サイン
持続的な足の挙上・鳴き声
跛行が頻繁になり、特定の動作(ジャンプや急な方向転換)で痛みから「キャン」と鳴くことがある。脱臼が自然に戻らず数分〜数時間続くこともある。
要注意サイン
常時跛行・後肢の筋力低下
お皿が常に外れた状態になり、歩行に影響が出てきている段階です。前十字靭帯断裂など他の整形外科疾患を合併することもあります。この段階では外科的な介入が必要になるケースが多いです。
重症度分類
グレード分類
パテラの重症度は国際的に1〜4の4段階で評価されます。タップして各グレードの詳細を確認できます。
1
グレード1
押すと外れるが自然に元に戻る
2
グレード2
自然に外れ、自然または手で戻る
3
グレード3
常に外れているが手で戻せる
4
グレード4
常に外れており手でも戻せない
グレード1:軽度
膝蓋骨は通常位置に収まっているが、手で圧力をかけると脱臼させることができる状態。自然な日常動作では外れることはほとんどなく、臨床的な症状(跛行など)も軽微またはなし。骨格変形は最小限で、軟部組織の変化も軽い段階です。多くの子が生涯にわたって大きな問題を起こさないこともありますが、体重増加や加齢でグレードが上がることもあるため定期的な経過観察が重要です。
治療の目安:定期観察・体重管理・関節サプリメント
グレードは変化する
グレードは固定ではなく、成長・体重増加・繰り返す脱臼による骨格変化で悪化することがあります。特にG1〜G2でも「成長期の若い犬」では急激に進行するケースがあるため、定期的な触診・X線検査による追跡が重要です。
グレードは固定ではなく、成長・体重増加・繰り返す脱臼による骨格変化で悪化することがあります。特にG1〜G2でも「成長期の若い犬」では急激に進行するケースがあるため、定期的な触診・X線検査による追跡が重要です。
診断の流れ
どうやって診断されるのか?
診断は問診から始まり、段階的に検査を重ねて重症度と骨格の詳細を評価します。
1
問診・歩様検査
いつから・どんな動作で足を上げるか、痛みの有無などを確認。
診察室内を歩かせて跛行の様子、スキップ歩行、患肢の使い方を観察します。
診察室内を歩かせて跛行の様子、スキップ歩行、患肢の使い方を観察します。
2
触診(整形外科的検査)
獣医師が膝を直接触って、お皿の位置・動き・外れやすさを評価します。
これによりグレードを判定します。痛みの感受性や筋肉の状態も合わせて確認。
これによりグレードを判定します。痛みの感受性や筋肉の状態も合わせて確認。
3
X線検査(レントゲン)
骨格の形状・脱臼の方向・骨変形の程度・関節炎の有無を確認します。
複数の角度から撮影することで、大腿骨・脛骨の回旋異常なども評価できます。
複数の角度から撮影することで、大腿骨・脛骨の回旋異常なども評価できます。
4
CT検査(手術前評価として)
外科手術を検討する場合に実施することが多い。
骨の3次元的な形状・回旋角度・滑車溝の深さを精密に測定し、どの術式が最適かを判断します。
骨の3次元的な形状・回旋角度・滑車溝の深さを精密に測定し、どの術式が最適かを判断します。
5
総合診断・治療方針決定
グレード・犬の年齢・体重・症状の重さ・飼い主の意向を総合して内科的管理か外科手術かを判断します。
片側のみか両側性かによっても戦略が変わります。
片側のみか両側性かによっても戦略が変わります。
治療法
内科治療 vs 外科手術
G1〜軽度G2は内科的管理が中心ですが、G2以上で症状が強い場合や進行するケースでは外科手術が標準治療とされています。
内科的管理
薬と生活管理で症状をコントロール
- 体重管理(関節への負担を軽減)
- 運動制限(ジャンプ・急坂を避ける)
- NSAIDs(消炎鎮痛薬)で痛みを抑制
- 関節サプリメント(グルコサミン・コンドロイチン等)
- 理学療法・水中トレーニング
- 定期的なモニタリング・グレード変化の追跡
外科手術
骨格自体を正しい形に修正する
- G2で症状が持続・進行するケース
- G3・G4は基本的に手術適応
- 骨格変形(回旋異常)への根本的な対処
- 術後の回復期(約6〜8週間)の管理が重要
- 再発率は術式や症例によって異なる(約10〜20%)
- 早期手術は関節炎などの二次病変を防ぐ
手術の主なステップ
パテラ整復手術は複数の術式(01〜04)を組み合わせることが多く、骨格変形の程度に応じてカスタマイズされます。
01
滑車溝形成術
大腿骨の溝を深く掘り直してお皿が収まる「溝」を形成
02
脛骨粗面転位術
お皿の腱がつながる脛骨の突起を切り離して正しい位置に固定
03
関節包・軟部組織のバランス調整
緩んだ側を縫い縮め、張り過ぎた側を切り離して左右均等に
04
骨切り術
大腿骨・脛骨に回旋変形がある重症例では骨を切って矯正
05
術後リハビリ
6〜8週の運動制限後、段階的な荷重訓練と筋力回復プログラム
06
長期フォローアップ
術後3ヶ月・6ヶ月・1年での再診を推奨。X線で固定の確認




